ヒンデミット
4日のフォニックス定期を終え、全てが終わったと思いきや、翌々日から昨日までフォニックス「クラウド・ポリフォニー」レコーディング。一同、疲れも取れきれないままの大規模レコーディングであるが、そのことに触れるとまたクラウドポリフォニーかよと思われそうなので、少し前の公演から、ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」を思い出しつつ。
僕は、たった今書かれたような現代曲もよく演奏しているのだが、実はヒンデミットは僕にとって結構難解な部類に入っている。
かなり複雑な小説を読んで、読み終わった時に、さて何が言いたかったのだろう。と後々考え込んでしまう感覚と似ているかもしれない。僕の能力(感性?)が楽曲に追いついていないいい例だ。
個人的にはヒンデミット好きは、職業演奏家や音楽愛好家に関係なく、やはりオーケストラを知り尽くしたベテラン勢に多い気がする(少なくとも僕の周りは)。
そんな中でも、この「ウェーバーの主題による交響的変容」はどんな人でもヒンデミットを好きにさせてくれる楽曲だ。構成も単純明快だし、4楽章なんてジャズ的な響きも感じるし。
この楽曲は4楽章に分かれていて、各曲それぞれウェーバーの4つの楽曲の引用になっている。
1楽章:Allegroは、「4手のための8つの小品」より
2楽章:Turandotは、「トゥーランドット」序曲より。
グロッケン(鐘)で始まり、この楽曲のティンパニソロは必聴。
3楽章:Andantinoは、『6つのやさしい小品』よりAndantinoから。
僕は終盤のフルートソロが本当に好きなのですよね。
全員がそこに向けてお膳立てしてる感じ。
4楽章:Marschは「4手のための8つの小品」よりNo.7 March。
テナードラムの印象的なパッセージがビートを鳴らし、金管楽器が鳴り響く。
どれも原曲の雰囲気を残しつつも、様々な楽器を駆使した、聴きごたえレベルが爆上がりの作品ばかりだ。
今回の担当は小太鼓(+テナー)周りと、2楽章のグロッケン(鐘)。
カリヨンを用意できれば最高なのだろうけど、このステージではチャイムを使用。
楽器を確認し、リハーサルが開始する前から波乱の予感。。
楽器が鳴らない!
恐らく、サスティーンペダルでのダンピング時にミュートの役割を果たすフェルトの部分が、長年の経年劣化により硬くなってしまったようで、全開までペダルを踏んでもすぐに止まってしまう状態だったのだ。
特に2楽章の冒頭は一音ずつほぼ裸の状態で鳴らさなくてはいけないので、鳴らないとまるで日曜お昼の歌番組の、それも残念な方の効果音になってしまうではないか!ダメ!ゼッタイ!
そしてリハーサルで案の定指揮者から指摘。ですよね~😑😑😑。
今からメーカーのメンテナンスに出す時間はもちろんないでしょうし、これは時間を割かなくてはいけないなということで、本番まで時期があまりなかったのだが、半ば応急処置的に改善させることを決意。
突貫工事の末、最終的にこのような形になった。内容は基本的に、随分前にブログで書いた「ラ・ボエーム」の際のスタンドを応用した。
使用したのは
・マイクスタンド
・ブームシンバルスタンド
・ミニティンバレス用クランプ
の三種類だけ。
重さで外れて事故が起きないように、アタッチメントがつながる場所が上部に来るように工夫した。
ベルの管をただS字フックにかけるだけだと、引っ掛けるワイヤーが楽器本体に触れてしまって、かえって音がミュートになってしまうので、(時間があれば木材の切れ端を切ってワイヤーの間にかませるのだが、今回は時間的に断念。)
黒布テープで応急処置。まずは乗り切らなくては。。
ささやかな努力が功を奏し、なんとか本番を乗り切ることに成功。本当はカリヨンでやりたかったけれど。それはまたの機会の楽しみに。
僕はスピード感のある演奏に感動する事が多いのだけど、ボストン交響楽団のユースオーケストラの演奏。若さゆえの粗こそあるが、これはヒンデミットのこの作品に、奏者の様々な思いが乗った名演と思う。
そういえばヒンデミットといえば、受験~大学の時にとてつもなくお世話になった本「音楽科の基礎練習」。終始〇〇しろ、〇〇やれ、弾け、といった命令口調(翻訳だけれど😏)に身が震えたっけ。
30代を歩む中で、中々傲慢になりそうなお年頃。今一度この本を読み返して、あの頃の身の震えを思い出すとしよう。
ちなみに、昨日のフォニックスレコーディング最終日は私の誕生日であった。
朝昼晩と難航したレコーディングからの、積み込み&積み下ろしで、一日が終了。体中がガクガクなう。
こりゃ、当分傲慢になる余地はないかもな。。