打楽🐷ぶ〜ろぐ

打楽器愛好者、曲淵俊介の身に日々起きる、打楽器に関する小言

マレット初稼働

山梨にてYWPさんにお世話になった際のこと。

少しマニアックなグループで、吹奏楽の一般的にはそこまで演奏されていない(されなくなった)名作を毎年一回、作編曲家鈴木英史氏の指揮で公演するという団体だ。

 

今回の楽曲セットリスト】

・バンドロジー/オスターリン
・嗚呼!/兼田敏
・水夫と鯨/マクベス
・バラード/リード
ジェネシス/鈴木英史
・第2組曲/ジェイガー

 

演奏者にとっては中々にウエイトのあるプログラムである。

 

今回の担当はティンパニ

ーーーーーーーーー

実はこの公演の少し前、とある吹奏楽の案件でのこと、ティンパニからとても楽曲にマッチしたいい音が聞こえてきていたので、休憩中にどんなマレットを使用しているのか伺ったのであった。

 

そこで伺ったのがこちらのマレット。

f:id:buulog:20220523155957j:image

・Tell Mallet

打楽器奏者の照屋郁海氏の制作によるマレット。

Twitterにて問い合わせ可、とのこと。

https://twitter.com/ikumi1000/status/1488062199268462594?s=21

ウエイトのバランスがよく弾きやすい上に、基音が美しく出るので、吹奏楽の大編成なんかで弾きこんでも、ちゃんと音程がわかります。

買ったばかりで、まだフェルトが馴染みきっていなかったので、練習、リハで最大限馴染ませての本番。

どんな強弱でもしっかり聞こえるので、今回の公演にはピッタリであった👍👍

 

実は、今年に入り色々と新しい世界に挑戦したくなりティンパニマレット探しに奔走していて、知り合いや現場にて色々な方々にお薦めのマレットを伺っていた。

こういう時はティンパニの専門家に聞くのが一番。

僕みたいな、よくばり何でも屋とは明らかに装備と経験が違うのでね😏😏😏・・

 

「ハアなんていい音・・・」

「ハアあんな音出してみたい」

 

昨年のそんな純粋な気持ちを今年は色々と研究していきたい。そんなお年頃(いい年してるクセに🎉)。

 

他にも試奏を行い購入を控えているものや、狙いを定めているマレットが既に何セットかある。今回が第一弾になる予定だ。

その内「曲淵破産したらしいよ」なんて風の噂が入るようなことがあったら、ヤツはティンパニマレットを買いすぎたんだな。とでも思ってください(結構高級な値段するのよ🤑)。

 

今回の楽曲たち

・「第二組曲」/ロバート・ジェイガー

短い作品ながらオーケストレーションの緻密な名作。

ジェイガーといえば「シンフォニア・ノビリッシマ」で、「二組」といえばホルストでしょう、というような言葉が飛んできそうだが、一度聴けばその響きの虜に。

これは個人的な見解だが、こういった和声感の強い作品ほど、音程感のあるプレイをティンパニストは行うべきだし、実際に聴衆として生の演奏を聴いて、一番心に残るのはそういった演奏に思う。

ついついティンパニを演奏することに気持ちが良くなってしまって、スーパープレイ!と目立つ演奏をしてしまいがちなのだけれど…

 

ジェネシス/鈴木英史

今年度の吹奏楽コンクールの課題曲。

自作自演になるわけで、初回のリハーサルの段階から、かなり綿密な指摘であった。

和声感をいかに大切に演奏すべきかをテーマに、バランスに特化したリハーサルだ。

ティンパニやグロッケン(和声に関わる音程を持った打楽器)以外の打楽器セクションに対する注文も非常にこだわったもので、スネアのロールや、冒頭のシンバル、大太鼓の一発一発にコードを感じさせるように何度も何度も繰り返しリハーサルを行ったりした(超高難易度)。

その楽曲を作った本人と演奏できるということの重要性を強く感じた一時であった。

 

・水夫と鯨/フランシス・マクベス

アメリカを代表する小説家ハーマン・メルヴィルの代表作「白鯨」を基にした音楽作品。

全5つの小楽章に分かれ、捕鯨船に乗った乗組員たちの、白鯨「モビィ・ディック」に対する復讐へと向かう船出から、白鯨との壮絶な闘いまでが描かれている。

原作(未読)では悲劇的な結末を迎えるそうだが、楽曲中では一切の屈託のないハ長調で高らかに幕を閉じる。

 

1楽章「イシュメール」でのティンパニの音色に静かな大海原をどうしても表現したくなり、変わり種を持ち込む。

f:id:buulog:20220525015909j:image

・ROHEMA ET423

これは少し前にフォニックスのウッド作品でフロアタムをpトレモロで奏した際に皆で使用した“ティンパニマレット”だ。

 

・重いヘッドに対して柄が長く、トレモロがしにくい。

・芯が遠くて叩き込んでも遠鳴りしない。

・音程感がまるで感じられない。

 

そんな訳で、実際にティンパニマレットとして使う事は一生ないと思っていた。

と、ボロボロに言っているようだが、悪口を言うつもりは全くない。

あのウッド作品時のトムでの音程感の薄い、打撃音の主張のない、だが深い、何だかわからない独特なサウンドを思い出し、コレだ!と使用を決めた。

 

ドラマの傍らで、人知れず鳴り響く大海原。これから起こる嵐の前の静けさ。

録音を聴くと、求めていたサウンドで思わず笑みが溢れる。

 

これだからマレット選びはやめられない。

 

5楽章は白鯨との対決。ティンパニ、大太鼓が冒頭から強奏で緊張感や恐怖を掻き立てる。

この時はこのマレット!


f:id:buulog:20220525215649j:image

Meister Schlagel 

新日本フィルハーモニー交響楽団首席ティンパニ奏者 近藤高顯先生制作の、ティンパニストなら言わずと知れたマレットのベリーハード。

相当硬いマレットなのだが、絶対に音が割れないのです。絶対に…

このマレットの最も恐ろしいのが、学生時代(約十数年前)にひょんな事で近藤先生から直接ご購入させて頂いた時から、音色が変わらずずっと使い続けていること。

当時「めったにほぐれないから安心して」と言われたのはよく覚えているのだが、まさかそこまでほぐれないとは、、奇跡のマレットである。

 

JPCで入手可能だ。

☆☆☆ / Meister Schlagel ハンドメイドティンパニマレット KD C-VH

 

マレットを選ぶ事は、技術を磨くのと同じ位大切。

優れた奏者であるからこそ、音への熱意と愛情をマレットにこめる。そしてマレットから通じた熱意が僕の技術を3割増に上げてくれる。

今日はそんなお二人の素晴らしいマレットに感謝をして、一日を終えるとしよう。