打楽🐷ぶ〜ろぐ

打楽器愛好者、曲淵俊介の身に日々起きる、打楽器に関する小言

サード・コンストラクション

お久しぶり投稿。

 

9月は色々と自分にもブログノルマなどを課し、これ位でいこうといった目標はあったのだが、色々とトラブルに見舞われ、少しだけお休みさせて頂いた。

ここに来てコロナ疲れだろうか?。コンサートもキャンセルが相次ぐ中(昨年の後期よりも体感的には多い)、最も身を持って異変を感じるのは人間関係に思う。

昨年はある程度団結して乗り越える事ができた。業界(世界?)全体が同じ状況であったからかもしれない。最近は一層ネガティブな感情に覆われた世界を目にする機会が多い。そして紛れもなく自分もその中の一部なのだと思う。

この一ヶ月、突如オフになった日も、忙しい日も欠かさず考えてきた

 

「何のために音楽をやるのか」

 

今は音楽によって相手を傷つけたり、傷ついたりすることが多すぎると感じている。人を傷つける道具でしかないのなら、自分の立場の優位性を主張するだけの存在でしかないのなら、そんなものは必要ないだろうと考えていた。

仲間と切磋琢磨し、いいものを作ろう。といったあの頃の時間は、全て蜃気楼の如く消え去ろうとしているのか…と。

 

何年後かにコロナ禍が収束したころ、おそらく元の日常には二度と戻らないのだろう。

多くの人々は同じように距離を取り、互いを半ば軽蔑的な眼差しで、監視し続けるのかもしれない。そして時には自分の意見ばかりを正しいと主張していく。

僕の尊敬する音楽家の一人は、とある人生の分岐点、降りかかったネガティブな人間関係の中で、こんな選択を自分に課した。

 

「人間をやめてまで演奏家を続けるか」

 

僕は人に対して、何か否定的な感情を持つことは多くはなくて、その感情のほとんどが自分に向いてしまう人間だ。だが、最近は外に向きそうな兆候を感じる。これは僕の中では重要な防衛ラインだったりする。何としてでも阻止しなくてはならない。

僕が音楽をやめる時は、本番で失敗した時や、批判された時や、影で散々こき下ろされたりする時ではない。音楽を武器に誰かを傷つけようとした時だ。

そんな時が来ないことを、今はただただ祈るばかりだが。

 

また、話が長くなってしまった😌😌😌イカンイカン!


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今日はさいたま芸術劇場にて打楽器アンサンブルの公演があった。直前に無観客配信に変更になったが、非常に尖ったプログラムのオーダー&最高のメンバーによって、鬱蒼とした気持ちに喝を入れられたところです。

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今日はその中で、僕の大好きなジョン・ケージの楽曲「サード・コンストラクション」を紹介します。

この曲はケージ作品の中でも初期に当たるもので、トムやクラベスなど楽器として用いられている物も多く登場しているが(後期の作品では、楽器からは随分とかけ離れたものor音色を使用することが多かったり、そもそも音さえも発しない作品さえある)、メインはやはりジャンクパーカッションと呼ばれるものだろう。

全20個の空き缶や、キハーダ(馬の顎骨)、ウッドラトル、ライオンの咆哮、ホラ貝など、クラシックパーカッションとしてはまず登場しないものだ。

そして何よりシンプルながら緻密に計算された躍動するリズムが特徴だ。

 

この公演では上野信一先生による、楽器選定のアイデアが多く輝きを放っている。

2番パートのトムをブーバン(オクタバン)に、3番パートのトムをダラブッカ(アラブ諸国やトルコのハンドパーカッション)、4番に関しては3台のジャンベ(アフリカのドラム)を用いており、よりワールドミュージック色の強いものになっている。その他カウベルやマレット選定等もこだわり抜いた演奏となっている。

これはコジマ録音さんの圧巻のクオリティでリリースされている。

tower.jp

今回は残念ながら、それらの潤沢な楽器群が僕達にはないので、ミュートをしたり作ったりアイデアを出しながらイメージを近づける作業となった。

 

・ライオンズロアー(ライオンの咆哮)

バスドラムのヘッドに穴を空けて(割れないようにテープで補強して)、縄跳びを固定する。
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そして濡れたクロスで引っ張れば、ライオンの咆哮の擬音である「ライオンズロアー」の完成。f:id:buulog:20211002004513j:image

全身黒ずくめのいい年をしたオヤジが、玩具コーナーで縄跳びの素材と色を吟味する絵はインパクトが大きいのでしょうか。これは作り話ではないのだが、スゴい勢いで避けてくれた推定小学生の女子よ。どうもありがとう。

 

・缶5連
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お次は、ペンキ用の缶をハンマーで叩いて調律。

ちなみに、意外と知られていない豆知識として。


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表からへこませると音程が上がり、


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裏からへこませる(盛り上がらせる?)と音程が下がります。

 

こちら、たしかコーナン(だったかな?)で揃えたのだが、上記CDレコーディングの当日に自宅に忘れるというミスを犯したのは裏話。

途中で気がついて、通り道のコーナンに寄って同じものを買い揃え、現地に早めについた段階で同じ音程に調律をして、レコーディングが終わる頃に皆に打ち明けた、という事がありましたね。

あってはならない事だが、とにかく僕の愛機がストラディバリウスではなく、缶で良かった。

 

今日の公演は近日無料配信予定。粗は多々あったし、事故も起きたし、反省点は星の数ほどあるが、4名それぞれが音楽に貪欲になる瞬間は、やはり純粋に大切なものであった。

 

今回は音楽と、そして仲間に救われた、かけがえのない一日。まだまだやれることはあるみたいだ。