我が祖国
少し前に東室さんにお邪魔した公演。
何が印象的って…
「我が祖国」全曲。
スメタナの「我が祖国」といえば第2曲「モルダウ」。クラシックファン、オーケストラファンでなくても必ず一度は耳にしたことがあるはずだ。単体で演奏することが多すぎて、この曲が6曲に渡る壮大な連作になっていることはそこまで知られていないのだが…
ちなみに、今回演奏したのは現在進行形で編纂がされている新しいバージョンで、まだ4曲しか発表されていないものであった。
第一曲「ヴィシェフラド」
ヴィシェフラドとは高い城という意味があり、この楽曲ではブルタヴァ川(モルダウ川)の畔にある同名の城(今は戦争で崩れ落ちて城跡が残っている)をイメージして描かれている。
冒頭、美しいハープが吟遊詩人を表現し第一曲は始まる。このフレーズが管楽器、弦楽器と受け継がれ展開していく。
中間部では兵士たちが意気揚々と進軍していく様子、戦乱、そして城が崩れ落ちていく瞬間が叙情的に奏される。城が陥落する瞬間のシンバルの強烈な一撃からの下降していく音階が印象的だ。最後は人々の悲しみがそっと歌われ、幕を閉じる。
第ニ曲「ブルタヴァ」
ドイツ語名「モルダウ」として最も知られている楽曲。
国土の真ん中を通り、チェコ人の心の拠り所とも言われるブルタヴァ川。
冒頭はフルートによる小さな支流から始まる。クラリネットによる第二の支流も加わり、徐々に大きくなっていく中で、弦楽器によるテーマが朗々と歌い上げられる。
狩りの合図をホルンで提示したり、二拍子の婚礼の踊りを経て、夜の月の光に揺れる川の流れ。クライマックスでは急流へと流れを変えていく様が、各楽器を巧みに使うことで聴衆のイメージにそのまま反映される。
ちなみに、大太鼓はこの楽章にしか登場しないのだが、急流の切迫した情景をリアルに表現している。
第三曲「シャールカ」
シャールカとは女性の名前で、女性部族の一人。敵対する男性部族に対する復習の物語だ。
冒頭は切迫した音楽(劇的なドラマを予感させる)で始まる。自らの策略の中で磔にされたシャールカが切実な泣き声をクラリネットで表現をしているのが大変印象的だ。
中間部から男たちの宴が始まり、泥酔し寝静まった頃、ホルンの音と共に女性たちが復讐に走る。酔った男たちは皆殺しにされてしまう。
第四曲「ボヘミアの森と草原から」
標題の通り、ボヘミアの情景(森や平原を抜ける風)が表現されている。
ポルカのリズムも登場し精力的に奏される。クライマックスシーンの弦楽器のリズミカルなユニゾンは一度耳にしたら虜になってしまう。
………と、ここまで書いたものの、今回の担当楽器は大太鼓。
出番が2曲目にしかない!!!
しかしそれは打楽器奏者にとっては日常茶飯時なのだ。僕は音楽を生業とした音楽家である(ドヤア)。
無論、ぼーっとしているわけではなく、スコアを開きながら合奏中に勉強をする。
ひ…非常に充実した時間であった。
今回の機材はパールのシンフォニックバスドラム。裏をA♭、表をCに設定。本皮の大太鼓は湿度や温度に影響を受けやすい。せっかく設定したチューニングも、ものの30分ステージに置いておくと変わってしまう。
本番前はもちろん、休憩中や曲間、場合によっては曲中にも指先で軽く音を出しつつ微調整を行う必要があるのだ。ドデカイ見た目とは裏腹に、意外と繊細なのです。
実は元々ヒョロヒョロガリガリだったのもあり、小回りの効くパートを担当することが多く、大太鼓はあまりやってこなかったのですよ。
ここ最近妙に依頼が来ております。
貫禄がついてきたということですよね。
わ・か・り・ま・す。(最近体重増えた)