Persephassa レコーディング
某日、フォニックスのレコーディングが行われた。
今回はヤニス・クセナキス作曲の打楽器6重奏作品「ペルセファッサ」(Persephassa pour six percussionistes/Iannis Xenakis)1曲の録音だ。
2日間の日程の中で、約28分の大曲を収録していくことになった。
・大曲の割にコンパクトなセットアップ
僕のパート(D part)の使用楽器リスト
ウッドブロック
マラカス
海の石
サイレンホイッスル
ボンゴ
トム
コンガ
シンバル
タイゴング
アフォランツ(薄い金属板)
こうしてリストアップすると多いなと感じるが、現代音楽作品の中ではかなり少ないほうだと思う。タイゴング2オクターブとか、大量のスイスカウベル、以前録ったジェームズ・ウッドのトム66個などは圧巻であった。
移動の積み込みに丸一日を要することも少なくない近年、今回の楽器数は奇跡と言えるほどだ。
今回、様々な素材で試行錯誤した後に採用された2種類のシマントラ(木片、金属)。
いずれもそのまま直接スタンドに取り付けてしまうとノイズが出てしまったり、響きが止まってしまったりするため、適切にカットされたスチロールや、ゴムで支えられている。
これによって、少々華奢なマレットでも良く響いた。
海の石は長く議論されたが、最終的に耐熱ガラスが導入。大きめの石が使われることはもちろんだが、貝殻が使用されることもあるという。サヌカイトという案も出され、僕はとても神秘的なサウンドで好みだったが、素材が「楽器」によりすぎたとの評価で今回は見送ることに。
撮り忘れたが、アフォランツ(終盤にこっそり登場する金属板)はアルミの薄い板を用いた。例えるならば、サンダーシートと言えば打楽器愛好家には伝わるだろうか。
・金属、木質、膜質を鳴らす
金属だけのパート、木質だけのパート、太鼓だけのパートをそれぞれが受け持つなら、こんなにやりやすいことはない。複数奏するにしても、せめて移動や持ち替えの時間さえあれば…
しかし「ペルセファッサ」ではそのような都合の良い時間は奏者には与えられない。
極めつけはクライマックス部分。6名の奏者が一拍毎に、近しい素材の楽器をトレモロで奏することで音が空間を回るサラウンド効果的な演出部分がある。
accel.により最終的に付点二分音符=88(最初は四分音符=30)という驚異的(というか不可能)なテンポに上がっていき、さらに演奏対象の楽器も次々に追加されていく中で、少しでも効率の良いマレットを選ばなくてはならない。
MR-1105
結局ここに還る。スッゴイ安いマレットなのだが、適度に硬く金属、木質、膜質を確実に鳴らすことが出来る数少ないマレット。打楽器初心者時代から継続して使っているバチは、コレとVATERのPICCOLOくらいです。スゴイ優秀。
・細かいテンポ設定
この楽曲は数学的にかなり計算された楽曲でテンポ指定がかなり細かい。
それぞれが、別々のテンポで演奏を始めてバラバラになっていくのだが、後々帳尻が合う。といった部分が多々登場する。
当時はメトロノームを各々持ち寄り、せーの!ポン!と同時にタップしてやっていたこともあったそうだが、今はデジタル社会。メンバーの機材への天才的な能力により、打ち込みでクリックを作成して貰った(本当に感謝)。しかも音声によるカウントまで入った優れもの。恐らくこれがなければ録り終えることさえ出来なかったかもしれない。
これをソフト化、公式にレンタルして一攫千金だ!(一同の士気爆上がり!)
しかし、この楽曲はライブで行う場合、客席を外して客席の端から端、対角線に六角形に打楽器を配置しなくてはならない。ホールの許可が下りる事も少ないのが現状。
一体、どれほどの団体が演奏するだろうか…(爆下がり)
この楽曲の入ったCDのリリースは未だ未定であるが、メンバーの音に対する想いの多く詰まった28分になることだろう。
コジマ録音さんへの信頼(サラウンド効果のある楽曲はかなり録るのが難しいとのこと)も最高に厚く、レコーディング中はエンジニアの方も「かなり効果的で面白い!」と乗り気な2日間となった。
恐らく生涯に一度の「ペルセファッサ」レコーディング。貴重な音響体験に関われたことに、感謝😌😌😌