打楽🐷ぶ〜ろぐ

打楽器愛好者、曲淵俊介の身に日々起きる、打楽器に関する小言

Ⅰ:Starlings(クラウド・ポリフォニーより)

9/4の演奏及びレコーディングを控えたクラウドポリフォニー(6重奏)から1楽章「Starlings」。

 

使用する楽器は4oct.マリンバと2つのウッドブロック/奏者のみ。

Starlings(ムクドリ)の名の通り、6名の奏者がラバーマレットを用いて、四分音符126のテンポで、細かいフレーズを延々と奏する。

初めは数匹のムクドリといった印象で、一人の奏者を追いかけるようにポツポツと鳴るだけだが、中盤に向かうにつれ、数万匹の大群のように音の雲(まさにCloud)のように聴衆に押し寄せる。

フレーズは一見、統一性がないように感じるが、実際はカノンのように(耳で全てを聞き取ることは殆ど不可能であるが)同じフレーズがごく短い間隔で追いかけ合うように作られている。

中間部ではやわらかいマレットに持ち替え、各奏者が独自のSoloフレーズを受け持つ。これはソフトマレットに持ち替えることで輪郭がぼやけ、更に音がミックスされるエフェクトを与え、その中に各自のソロがスパイスのように個性を持つことで、より音の雲が増幅しているような感覚に陥る。

後半では、ハードラバーに持ち替え、ウッドブロックが登場し、大群が目の前どころか聴衆を取り囲むようにクライマックスを演出する。

最後は再びミディアムラバーマレットに持ち替え、また遠くに飛び立っていくように音が小さく、少なくなっていって、また一人の奏者が弱音で奏し、一楽章は幕を閉じる。

 

この楽曲はとにかく各々の拍節感を揃えることが至難の業で、ただでさえ細かいパッセージが、響きで殆ど聞き取れない。かといって他の奏者の手の動きを注視すると、自分と同じフレーズを絶妙にずれて演奏していたりするのでつられてしまったり、落ちてしまったりと散々なのですよ。とにかく視線は譜面と指揮にかじりつき&目線のどこかに各奏者を置くという、中々にストレスフルな時間を過ごさなければならない👀!!一度通したら涙がポロリと落ちるくらいドライアイになっているのよね。。。

 

さて今回使用するマレットは3~4種類。
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・マレテックのNR19R。かなりハッキリと輪郭が出るが、硬すぎず、音板への負担がある程度抑えることが出来る。ラバーマレットにしては意外と重さもあるので奏者の腕の負担も軽減できる優れものだ。美味しそうだし🍭。

 


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・マイクバルターの23R。先ほどのマレテックに比べて随分ソフトなタッチだ。中音部を担当させるとかなり深みが出て、太い鳴りが魅力だ。高音部がどうしても届かないのが残念。持ち替えがかなりシビアな曲なので、ひょっとするとサヨナラな候補である。


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・プレイウッドM-03。こちらはハードマレット指定の際に用いるマレットだ。ウッドブロック他最高音部を担当。非常にキレのあるマレット。モクショウ等にもオススメだ。

中音部以下は危険。ダメ、ゼッタイ!


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・ ヴィックファースM32。本来ならスーパーハードに位置付くこちらのヴァイブマレット、今回はソフトマレットとして担当(爆)。理由は、マリンバのソフトマレットだとあまりにも輪郭が薄れてしまって収拾がつかなくなってしまうからだ。しかもソロパートが出てくる以上、パンチもないといけない。。ちなみにこのマレット、ヴィブラフォン用マレットとして、超万能。

 このような具合に、マリンバアンサンブルの楽曲としては、異例に近いラインナップだ。他の楽章も中々にオリジナリティに溢れている。

 

「知る人ぞ知る」、「好みが分かれる」、「演奏が殆ど不可能(楽器が揃わない)」と、一般的には❝微妙3拍子😏❞が揃っているが、現代曲とはそういうもの。

愛情を持って、可能な限り歴史に残し続け、非力ながら少しでも注目を集めることが演奏家の誇りのようなものだと想いながら。。