打楽🐷ぶ〜ろぐ

打楽器愛好者、曲淵俊介の身に日々起きる、打楽器に関する小言

第一組曲

 少し前になるが、とある吹奏楽のコンサートがあった。僕自身、大ホールで吹奏楽を演奏するのは半年ぶり程になるし、その頃は(今もほとんど変わっていないけど)大規模イベントの再開も決まったばかりで、演奏者同同士は2メートルの間隔を空けなくてはならなかったが、それでも大人数で演奏会ができることは喜びでいっぱいだった。

 

 演奏曲目はホルストの第一組曲と第二組曲吹奏楽愛好家にとっては今更会話にも出ないくらい切っても切り離せないバイブルのような曲だし、何回も演奏したことがあるが、その度に鳥肌が立つくらい感動する(ヒヤっとするアクシデントも大体発生する・・)。

 今回のパートはシンバル。この曲のシンバルとバスドラムを担当する時は、わくわくする方が多いのではないだろうか、逆にトライアングルとタンバリンってなると「ギク・・」なんて方もいたりして。

 この曲のシンバルの使われ方は本当に多様で、ある時にはマーチの中のシンバルの表情、ある時にはソロで目立つ場面、サスペンデッドシンバルを用いた「風」のような演出、音楽が長いフレーズで昇り詰めていく中で、一番頂点の部分で全員でたどり着く瞬間に彩を添えるシンバル等々・・・本当に色々な顔を見ることが出来る。音色を勉強する上でも非常に大切な楽曲の一つと思う。

 

 楽譜には一つの点と強弱(p、mp、f etc.)しか書かれていないが、場面で(または指揮者やグループのキャラクターも)どんな音を出すがはアナタ次第。ある楽団はシンバルが前面に出るような演出をしているのに対し、別の楽団は和音に溶け込むように演奏しているし、特に2楽章に1発だけ登場するシンバルに関しては、100グループあれば100通りの演奏を聴くことができる。

こういった古典を演奏する時は、できるだけ多くの演奏を聴くのが面白い。

 

 僕はどちらかというと管楽器に寄り添う演奏が好みで(ビビりなのか!?)、どんなに大音量を出す状況でも、絶対にメロディーが聞こえなくなるようなことはしたくない・・でも、打楽器やってるので、爆音の気持ちいい快感に酔いしれたい(これ、本当に気持ちいいの)!!という葛藤の繰り返し。少なくとも一つの奏法に固執してしまうと一種類の音色しか出せなくなってしまいそうで、現場にいったら機会さえあれば皆さんのシンバル美学(これが聞くと出てくる出てくる!)を伺うようにしている。特に「シンバル奏者」を肩書とされている方もいるわけで、こういう方の美的センスは本当に勉強になるのですよ。僕は振りかぶって演奏するが、極めちゃった方って振りかぶんないんだよなあ。ぶつけないんだよなあ。なんなら動かない、位の感覚。なのに音量、音色共に絶品だったり(タイミングも)。あとはこれは全ての楽器に共通することだと思うが、今ここで聞こえる音ではなく、ホールの客席でどう聞こえているかをイメージできるということ。そんな方と隣で仕事した日には、お客さんでもないのに涙が出そうになることも・・・。

 

 僕は今回、とにかく息遣いに注目をすることにした。ソーシャルディスタンスの関係でかなりの距離があるので音を聞いたり、ただ指揮者に合わせているだけでは合わない。古典のため、譜面は把握しているのが吉、リハーサルから横目でシンバルと演奏が合うパートを見ながら、息遣いとそれに伴う身体の動きを感じつつ、同じ息遣いや身体の動きでそのパートとリンクさせていく。自分が導く必要のあるところは率先して(大太鼓パートと共に)ブレスを大きめに取る。これらは演奏する上では当たり前のことだが、過酷な状況下の中だからこそあらためて学べたところも沢山あったと思う。

 

 次回第一組曲を演奏する時にはどんなグレードアップが出来ているだろうか、どんな学びがあるだろうか。古典と共に成長できる期待に心が躍る。

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